こんにちは、ケアマネージャーの麦マネです。
今年4月に訪問介護のヘルパーからコロナウイルスが感染し、一人の女性が死亡した事故?災害?について遺族が訪問介護事業所を提訴しました。
確かに家族の気持ちも分からないでもありません。
と同時に、この提訴に対して、ケアマネージャーとして危機感を持っております。
私はこのヘルパー事業所の名前も知らないし、このヘルパーさんが日頃どのような感染対策をしていたかも知りません。
だけどコロナの中で、介護業界がどのように変わり、どのようにして高齢者を支えていたのか知っています。
ケアマネである私の視点も知ってもらいたく、この記事を書きました。
※当サイトは、アフィリエイトプログラムに参加しています。記事内容は公平さを心がけています。
三次市ヘルパーからコロナ感染、家族が提訴
- 82歳の女性が新型コロナウイルスに感染して死亡した
- 感染源は訪問介護のヘルパー
- 家族はヘルパー事業所に損害賠償を求めている
広島県三次市で一人暮らしをしていた女性(82歳)が4月3日にコロナウイルスに発症し、4月19日にコロナウイルスによる肺炎で亡くなりました。
女性の遺族が、訪問介護事業所に計4400万円の損害賠償を求めて広島地裁に提訴。
『ヘルパーが訪問を控えていれば母親の感染は防げていた』として、運営会社の安全配慮義務違反や使用者責任を問うています。
- ヘルパーの訪問は3/23、3/27、3/30、4/2、4/6
- ヘルパーは3/31に発熱と味覚・嗅覚異常
- 翌日にいったん症状が改善したため訪問を再開
感染可能性を認識していたのか、いなかったのか分からないけど、4/2以降の訪問は回避すべきであったと訴えている家族の指摘です。
遺族の男性は中国新聞の取材に対し「ヘルパーを交代させていれば母の命は奪われなかった。運営会社は責任を認めて謝罪してほしい」と話しているそうです。
この事故?災害?を受けたご利用者さん及び遺族の方、お悔やみを申し上げます。
というのは本心でありながらも、私の感情としては『ちょっと…』という感情もあります。
今回は『ケアマネ』という立場で物を申しますが、自分が『家族の立場』であれば冷静でいれないかもしれないことはご了承ください。
ヘルパーが全て悪いのか?
- コロナの中でのヘルパーの仕事ぶり
- 制限された日常生活
- 廃業するヘルパー事業所
コロナの中でのヘルパーの仕事ぶり
訪問介護について
まずは訪問介護(通称ヘルパー)の仕事について、簡単に解説します。
訪問介護とは、自宅にヘルパーさんがきて日常生活の介護を行うことです。
一人暮らしや高齢者世帯で使うことが多いです。
- 食事の介助
- 排泄の介助
- お風呂の介助
- 食事作り
- 買い物
- 部屋の掃除
ヘルパーが来ないと日常生活が成り立ちません。
極端な話、ヘルパーなしでは餓死する人もいるでしょう。
だから、
コロナであろうと、なかろうと、利用者さんは家でヘルパーさんを待ってます。
これが現状です。
訪問介護を中止にできない理由
さて、緊急事態宣言となった3月。
厚生労働省から こんな文章が介護サービス事業所(訪問介護など)に示されています。
訪問系サービスにおける新型コロナウイルス感染症への対応について
少し抜粋しますとこんな感じです。
『特に訪問系サービスについては、利用者に発熱等の症状がある場合であっても、十分な感染防止対策を前提として、必要なサービスが継続的に提供されることが重要』
国の文章は堅苦しく分かりにくいので、個人的見解も交えて解釈します。
- デイなど休業するところがあるけど、訪問介護(看護など)は働いてね。
- 熱っぽくてもコロナじゃないと思うから、訪問の中止はダメよ。
- もちろん、あなたたちも感染対策はやってね。
少し嫌味っぽく解釈しましたが、おおむねこんな感じです。
この文章の通り、訪問介護は少々無理してでも訪問介護をやらなければいけなかったのです。
繰り返しになりますが、
コロナであろうと、なかろうと、利用者さんは家でヘルパーさんを待ってます。
それに応えなければ、いったい誰が利用者さんの生活を守るのでしょう?
家族ですか?家族ができていれば、そもそもこんな事起きていませんでしたよね?
ヘルパーもプロ意識を持って働いていることは、理解してほしいところです。
感染対策について
もちろんプロであるからには、コロナ感染対策もやっています。
先ほどの厚生労働省の資料の抜粋部がコチラです。
国の指針も示され、各事業所で徹底されていたハズです。
もう少し加えて言いますと、
3月~4月は手探り状態で日本中、世界中が動いていました。
いくら厚生労働省が指針をだしても、誰もが始めての経験。
そしてマスクや手袋、何もない状況でしたよね。
今でこそ(令和2年10月)振り返って反省できることもあるかもしれませんが、3月~4月はハチャメチャな状況でしたよね?
この三次市のヘルパー事業所がどこまでの危機管理を持って、どこまでの感染対策をやっていたかは不明です。
しかし、感染対策をやりながらも、『行かねばいけない仕事』というのが全国のヘルパーのプロ意識です。
遺族の悔やむ気持ちも理解できます。
しかし、訴えるぐらいなら、なぜヘルパーという他人を自宅に入れたのでしょうか?
その当時、他人と接触を避けることは、世間の常識だったハズです。
ヘルパーと接触するという非常識なことをやりたくなければ、家族が介護するべきなのでは?
制限された日常生活
ヘルパーに限らず介護従事者と医療従事者は、日常生活に制限をかけた生活を送っています。
そんなの誰でもじゃん!
もちろん、そうですね。
別にGOTOトラベルを馬鹿にしているわけではありませんが、『行ったら誰かに迷惑かけるかも…』そんな気持ちでいるのが介護従事者です(多分…)。
少なくとも私はそう考えています。
介護従事者がコロナにかかったら、何百人の介護に影響を与えます。
- コロナになって影響を受けるには自分の担当だけでない
- 他のメンバーの担当利用者も…
- その利用者が通うデイ仲間も…
一人のヘルパーがコロナにかかれば、地域に住む全ての利用所の介護サービスが止まってしまうかもしれないので恐怖と戦っています。
廃業するヘルパー事業所
コロナが流行る前から、ヘルパー事業所は減少傾向でした。
別に今に始まったことではありません。
ヘルパーとして働いてくれる人材を集めることができずに、ヘルパー事業所はどんどん倒産。
需要はあるのに、人材が集めれないための事業所閉鎖です。
残されたヘルパー事業所は良いのか、悪いのか、フル稼働の毎日です
そこにコロナウイルスがやってきて、感染対策に留意したヘルパー派遣。
もうヘルパー事業所の廃止に拍車がかかっても、何の不思議もありません。
コロナの中、今後ヘルパーはどうなる?
- ヘルパー派遣が萎縮する
- 辞めていくヘルパー
在宅介護の要である訪問介護。
この事故?災害を受けて、他の訪問介護事業所はどうなっていくでしょうか?
ヘルパー派遣が萎縮する
こんなことが起きれば、ヘルパー事業所はより慎重な対応をもって、ヘルパーの派遣を行っていくでしょう。
断っておきますが、コロナ対策として慎重に対応することが悪いわけではありません。
慎重になるのは大事だけど、慎重になりすぎて、受けれるはずの介護サービスが受けれない人が現れないかの懸念です。
例えば、
- 都道府県を跨いでの移動は禁止
- 跨いだ人と接触したら訪問介護を受けられない
- ヘルパーが跨いでも訪問介護の仕事に出れない
こんな状況にまた戻ってしまったら、困るのは誰でしょう?
辞めていくヘルパー
私はヘルパーでなくケアマネです。
直接的な介護はやっていませんが、利用者と触れ合うことは日常茶飯事です。
もちろん、マスク着用、ソーシャルディスタンス、手洗いうがい、
こんなこと当たり前です。
7月頃にうがい液が店頭から消えた時は、さすがにイラっとしました。
こちらはコロナ関係なく、毎日うがい手洗い、夏の暑い中もマスク着用して、風邪菌だろうとコロナ菌であろうと予防しているのに、流行みたいになくなる商品列。
申し訳ないが、私も小さい子供がいますが、半年以上、買い物にすら連れていってません。
まあ自分の話はどうでもよいのですが要はヘルパーさんです。
私が知っている限りでは、直接的な介護をするヘルパーさんは、ケアマネ以上の予防策を敷いています。
ヘルパーさんはアルコールに負けて1年中、手がガサガサです。
そしてヘルパー自身の家族も巻き込んだ予防対策。
ここまでやって訴えられる恐怖と向き合うなら、別の仕事を選んだほうが無難と考えるのは自然なことですよね。
そのときに困るのは誰でしょう?
まとめ
このヘルパー事業所がどのようなコロナの感染対策を行い、危機管理をやっていたのかは今のところ、謎であるし、今後明らかになっていくのかもしれません。
だけど、私の周りのヘルパー事業所、デイサービスなどは、自分がコロナの感染源にならならいように慎重に生活を送っています。
私もいつ三次市のヘルパーさんの立場になってしまうのか、ビクビクしながら仕事をしています。
亡くなられた方や遺族の方の悔やみきれない気持ちも理解しますが、この提訴が介護業界にとってマイナスとならないことを祈るばかりです。