今度、施設で看取り介護が始まる。正直不安だし、関わりたくない…。
私が夜勤の日に当たるかも、勉強だけはやっとかなきゃ。
そんな疑問に答えます。結論から言いますと、看取り介護は特別な介護ではありません。
特別なスキルや資格が必要ではなく、心構えをしておくことが重要です。
✔︎ 本記事の内容
- 施設の看取り介護が理解できる
- 看取りチームの一員になれる
- 嫌な時は逃げればいい
看取り介護を語る、あなたは誰?
前述しましたが、現在は居宅のケアマネージャーとして働いています。
- 〜26歳看取り経験なし
デイケア勤務
- 27歳〜施設で看取り、6回
施設のケアマネ
- 34歳〜現在在宅で看取り、1回
居宅のケアマネ
お気づきの通り、介護士としての看取り経験はなく、ケアマネとしての経験だけです。
後述しますが、看取り介護はチーム戦です。
誰がリーダーとかではなく、チーム全員で看取りを行います。
看取り介護とは
看取り介護のどこが不安ですか?
人が死ぬんでしょ?
私は医療の知識持っていないし、苦しんでいる時に何もできない…
私もそう思っていました。だけど違うんです!
まずは看取り介護とターミナルケアの違いを知り、怖いイメージを取り除きましょう。
看取り介護とは
看取り介護は、医療ではなく、介護です!
公共社団法人全国老人福祉施設協議会は看取りについて、次のように定義しています。
看取りとは、近い将来、死が避けられないとされた人に対し、身体的苦痛や精神的苦痛を緩和・軽減するとともに、人生の最期まで尊厳ある生活を支援すること。
つまり?
つまり…
後半が大切で、
人生の最期まで尊厳ある生活を支援すること(最期まで本人らしい生活を送れるように支援)
ということになります。
本人らしいというのは後述するとして、
看取り介護は『医療ではなく、介護である』というイメージが少しはできましたか?
ターミナルケアとは
ターミナルケアは終末期の医療です。
もう一度言いますが、医療です。
具体的には点滴や酸素吸入などの医療ケアなので、介護施設で行うものではありません。
なかには疼痛緩和を目的に医療ケアを行う看取りもありますが、
医療ケアが中心なのか、介護ケアが中心なのか、そこに大きな違いがあります。
結果、介護施設では積極的医療はできないので、介護を中心とした看取り介護を行います。
私は看取り介護をこうやりました
ここでは入所から看取るまでの一例を紹介します。
誤解がないように最初に言っておきますが、看取りには正解はありません。
本人らしい生活を支えるために、看取りのやり方も千差万別です。
看取るまでの流れ
- 80代の女性
- 末期癌(未告知)
- 要介護1
- KPは妹
適応期・安定期
- 入所当時は本人はADLほぼ自立
不安定期・低下期
- 半年後より食事が入らなくなってきた
- 主治医より余命の宣告(家族と施設へ)
- 施設より家族へ最期はどうするか確認、家族は施設での看取りを希望
- 看取りチームが出来たが、主治医だけは点滴をやりたがる(家族の意図を読めてない)
- 主治医の変更(家族の知り合いの知り合い)
- 新しい主治医の方針、何もしない、薬も減らす、枯れるように逝かせる、それが本人らしい最後の時間
- 新しい主治医は往診にくるが、どちらかといえば精神的サポートのみ
- 部屋から出てくるのもキツくなった、部屋で過ごす
- 誕生会を部屋で家族とやる、主治医は花を持ってきた
看取り期
- 入浴ができなくなり、清拭で対応
- 施設の食事が入らない、栄養とかそういうのに拘らず、好きなものを食べてもらう
- 痛みだけは避けたいのでエアマットを入れる
- 施設職員はいつも通りの業務をこなす
- 最期は家族に見守れて逝く
- 看護師のサポートを受けながら、家族と介護士が死後の処置を行う
どうでしょう?これって介護ですよね。
看取り介護のチームと役割を知ろう
私はどんなことをやればいいんだろ?他の人はどんな役割なんだろ?
看取り介護はチーム戦です。
どのようなチーム構成ができるかで、看取りの方法も変わってきます。
看取り介護チーム(施設編)
チームの一例
- 施設スタッフ全員
- 主治医
- 家族
え?施設スタッフ全員っておおざっぱ(汗
看取り介護をやりながら、他の入所者の介護もやることになります。
スタッフ数は限られているので、時には事務スタッフが食事介助に入ることもあるでしょう。
そういう意味で、『看取り介護はスタッフ全員』という意味です。
役割
- 主治医→往診、メンタルケアなど
- 看護師→褥瘡処置など
- 介護士→生活のこと
- 家族→家族としての役割
よって、介護士のあなたは、生活全般の介護や寄り添うケアが中心となるでしょう。
看取り介護チーム(在宅編)
在宅での看取りも少しだけ紹介しておきますね。
在宅の場合、最初は家族とケアマネしかいませんので、チームを作らなければいけません。
とはいえ、ここでもその人らしい生活を支えるため、チームも千差万別です。
- 訪問看護
- 訪問介護
- 訪問入浴
- 主治医
- 薬局
- 家族
- 友人
大体はこのあたりの訪問系が主流です。
訪問介護で働いていれば、看取り介護に関わることもあるかもしれません。
看取り介護の心構え
テクニックでも資格でもありません。
以下のことを心構えておけば、あなたにも看取り介護はできます!
本人らしい生活を支える
ここがあまりピンとこないかもしれませんが、
看取りだからといって特別なことは必要ない、
そんな思考です。
例えばこんな人にこんな介護は必要ですかね?
✔︎ 内気な性格で、静かに過ごすのが好きだったおばあちゃん
一人にさせるのが可哀想。10分置きに訪室しよう♪
テレビの音量も大きい方がいいよね。
✔︎ 病院が大嫌いだったおじいちゃん
食事量が減ったな。
主治医に点滴や薬を出してもらえるように相談しよ。
正解はありませんが、訪室を最小限に控えたり、好きなものを聞いてから作ってあげることが、もしかして本人らしい生活を支えることになるかもしれませんね。
柔軟な対応
看取るまでは色んなことが起きます。
「こう!」と決めつけずに、柔軟な対応が必要です。
代表的な例がコレでしょう。
やっぱり病院に入院させたい。点滴だけでもお願い。(泣)
え?施設で看取るんじゃなかったの?
最初に看取り介護をやる約束をしたかもしれませんが、家族の気持ちはいつも揺れ動いています。
約束したからダメではなく、他には方法がないのかを考えましょう。
家族に寄り添う
本人に寄り添うのも大事ですが、家族に寄り添うのも大事にです。
家族はどんな想いで施設に通うでしょう。
- 辛いな
- 今日の体調はどうかな
- 寂しくないかな
- 明日も会いたい
色んな想いで面会にきて、色んな想いで過ごし、色んな想いで帰ります。
ちょっと難しいんですけど?
『悲しい時は一緒に悲しみ、楽しい時は一緒に笑う。』
家族をお客さんとして見るのではなく、ひとりの人間として見れれば、自然とできると思います。
看取り介護の問題点
さっきから看取り介護をリスペクトして解説していますが、現実的な問題点もたくさんあります。
日本人の気持ちがまだ追いついていない
あなたが死ぬとした、どこで死にたいですか?
家かな?
そうなんです!本心は在宅死を希望しているのに、実際に死ぬ場所のほとんどが病院です。
確かにここ10年近くで、『施設での看取り』も結構当たり前化してきましたが、好きで介護施設を選んでいるわけではありません。
病院は3ヶ月で退院しなきゃいけないって聞いたから…
とはいえ、この動きは今後加速していき、病院→施設→自宅と徐々に死場所が移行していきます。
え?自宅で看取り?さすがにそれは無理でしょ。
ね、気持ちがまだ追いついていないでしょ?
介護スタッフの負担が大きい
看取り介護に積極的な施設、
レクレーションに積極的な施設、
どっちがいいですか?
レクレーションの施設が楽しそう。余計なストレスも感じなさそう。
この記事では、看取り介護は、いつも通りの介護をやるだけと解説してきました。
本質はそうなんですが、『ストレスゼロ』、『平和な通常業務』、それは違います。
個人差はあるとしても大なり小なりの介護スタッフの負担はあるでしょう。
とはいえ…
もうこの流れは止まりません。
それどこか加速していくでしょう!
誰かが、どこかの施設で、看取り介護をやらなければいけません!