令和6年6月に居宅ケアマネとして看取りをやりました。
「施設で看取りはやったことある」
「自宅の看取りはよく知らない」
「そもそもケアマネって何やってるの?」
そんな方に僕がお手伝いした在宅看取りを解説します。
「自宅の看取りってこんな感じなんだー」と介護業界で働いているなら、知っていて損はないと思います。
対象者について
- 要介護2
- 女性
- 96歳
- 息子夫婦と同居
ざっくりこんな状況の方です。
実は5年前からケアマネを担当していました。
当初は自宅からデイサービスに通っていたけど、1年前に住宅型有料老人ホームへ入所。
看取りに至った経緯
令和6年4月から食事が入らなくなったところから始まりました。
点滴を毎日受けているため、主治医から家族に話が…。
主治医からの説明
老衰ですね。
あと2週間持つか…
入院できる病院を探しましょうか?
補足説明
- 点滴のために毎日通院しているので、今の施設では対応ができない。
- 協力医療機関からすぐに紹介できる療養病院が結構遠い
ケアマネに相談
翌日、僕のもとに家族から電話がありました。
麦マネさん!老衰は仕方ない。
でもあんなに遠い病院はイヤ(片道50分)。
もっと近くの病院に紹介してもらえないか?
事情を理解した僕は、家族に言ってみました。
自宅で看取りをしませんか?
え?家で…??でもそれもそうかも…
今から主治医のところに行きましょう!!
主治医と話し合い
話をスムーズに進めるために、知り合いの訪問看護ステーションにも同席してもらいました。
主治医から説明を受けていく中で、家族も看取りを受け入れていく。
且つ役割も自然と決まった。
✔︎ 役割分担
- 主治医→週1回程度往診
- 訪問看護→点滴、清拭、排泄ケア
- 福祉用具レンタル→ベッド
- 家族→全体的な介護
- ケアマネ→色々考える
基本的に寝たきり、食欲もないので、家族がガッツリ介護をすることもない。
大変そうなことは訪問看護が昼間のうちに終わらせるというスケジュールです。
それよりもケアマネの「色々考える」ってw
ベッドの準備、退所日を決める
あとは自宅へ帰るための準備です。
あと2週間くらい…という期限があったので、
めちゃくちゃスピーディに動かなければいけない!
ベッドの準備
主治医との話し合い中に福祉用具業者に連絡。
✔︎ 用意してほしいもの
- 介護ベッド
- エアマット
- サイドテーブル
最短でいつ納品できますか?
最短で今日の夕方いけます!
よっしゃー!
とりあえず今日納品してください!
退所日を決める
今日話し合って今日退所するというのもあまりに忙しいので、明日退所することに決定。
施設から送迎もしてくれるらしいので、ご厚意に甘えて(嬉)
自宅へ退所〜看取り開始
さて、午前中のうちに施設から送迎をしてもらい、無事に約1年ぶりに自宅へ帰ってこられた。
こういうのも変な話だけど、生きているうちに自宅に帰ってくるって、そうあることじゃない。
家族がみんなで迎えて「おかえリー」という風景。
いつもと違う感情が込み上げてきますね(感激の涙)
話を元に戻すが、さっそく担当者会議を開きました。
この場でやるべきことは3つ。
- 看取りチームの役割の確認
- この場を和ませる
- お世話になった施設への感謝
ー介護終了後ー
今日はありがとう。
スイカ食べて。ジュース飲んで。
これもこれも…
そ、そういうわけには(汗)
戸惑う他の事業所…。
ここで切り出すのが僕の役目!
みんなが遠慮しているので先に食べますね🎵
ハッキリ言います!
他事業所の気持ちも理解できます!
家族の感謝の気持ちも無碍にできない!
そして僕が食べないと、みんなが食べないことも分かってる!
じゃあ僕が先頭切って食べる!
こんな和やかな雰囲気を作ることこそ、僕の役割だと自信を持って思っています。
ここからの僕の役割
- 本人の状態確認
- サービスの過不足はないか
- 家族の精神面のサポート(要は話し相手)
別に決まった回数はないけど、ちょこちょこと訪問してここらへんをやっていく感じです。
10日目。あれ?予想と違うぞ?
さて、最低でも3日に1回は自宅を訪問して様子をみてました。
ところが本人は元気なんです。
もちろん歩いてるとか、食事をガツガツ食べるとか、そんな状態じゃない。
でも受け答えもハッキリしているし…。
「本当に2週間???」
「あれ?いつまで続くの?」
と家族の心境変化するのも無理のない話。
ここで一度主治医に話を聞きにいきました。
先生!本当にあと2週間なのですか?
主治医の説明は以下の通り
- 自宅に帰ったことで環境的にも本人に良い影響
- とはいえ食事が入っていない
- 点滴しているが脱水には変わりない
- 点滴が外れると…
- 今は会いたい人に会わせるための時間稼ぎ
ふむふむ。看取りの段階ではあるが、もう少し長引きそうなのね。
長引くなら次の作戦を!
長期戦を覚悟して次の作戦を!
区分変更
これまでは特別指示書のもとで『医療保険』から訪問看護が入ってました。
でも長引くようなら『介護保険』で訪問看護を検討しなければいけない状況です。
問題点の補足
- すでに福祉用具レンタル利用(介護保険)
- 後述する訪問入浴の追加検討(介護保険)
- そこに訪問看護までも介護保険
要するに要介護2の認定ではサービスに過不足が出るよ!って話です。
よって区分変更をすることに決定した。
行政にも事情を説明し、認定調査も審査会も早目に済ませてもらい、介護4の認定が降りました。
訪問入浴介護の導入
看取り導入時は「入浴は清拭」と共通認識していました。
でも長期戦となれば話は別。
「一回でもいいので湯船に入れてあげたい!」
じゃあ訪問入浴ですね。
訪問入浴導入までにやったこと
- あちこちの訪問入浴に電話
- 隣市の事業所が来てくれる
- 2週間に一回でよければ…
- あざす!それでいいです!!
急な要求に対応してもらえたことに感謝です!
ちなみに全部で3回利用することができました。
点滴を終える決断
こうやってサービス調整はうまくいったと思います。
でも家族の精神的な負担・葛藤は否定できない。
食事はほとんど食べていない。
結局のところ、点滴で延命をやっているんですよね。
そして先生ともしっかり話し合い、6月から点滴は中止となりました。
最後の訪問入浴
6月最初の訪問入浴日。
家族よりケアマネに連絡。
朝より微熱。サーチは80代。
今日はお風呂大丈夫かなー?
すぐに訪問して本人に意向を確認。
「お風呂に入りたい」
今日が多分最後の入浴になるでしょう。
何より本人の意向を最大限に尊重して、入浴させようと家族と決めました。
終わってみれば、「気持ちよかった…」と本人の声にみんな安堵の表情。
そして…
1週間後、訪問看護ステーションより訃報の連絡がありました。
すぐに自宅へ訪問して最後の挨拶を。
居宅ケアマネの役割って
ご覧の通り、ケアマネが直接身体介護をすることはありません。
看取りをやるうえで、居宅ケアマネとしての役割は3つ。
- 各事業所の役割をリスペクトして、最大限におもてなしをします。
- 家族も看取りチームのメンバーと認識して、一緒に看取りを行います。
- サービス調整を行います。
なんだかんだでケアマネってメンバーの中心にいるので、軸を持ってメンバーに働きかけをしないとね!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
家族の抱える葛藤